西南戦争之記録

これは高橋信武が書いています。

廣瀬雄一著「対馬海峡をめぐる先史考古学」同成社 2023年11月30日発行

表題の本をいただきました。

著者の廣瀬雄一さんは慶応大学大学院を卒業。韓国の釜山女子大学客員教授の頃、九州縄文研究会でお会いして以来の交際ですが、近年の高橋は西南戦争戦跡の方に興味が向いたので縄文研究会から足が遠ざかっており最近はお会いすることもなくなった。彼はまもなく佐賀県教育委員会名護屋城博物館に長く勤務)に勤めていたが定年前に退職し、釜山大学に転職した。その間、ずっと日本の縄文時代と韓国の新石器時代の研究を続け、時々論文の抜き刷りをいただいていた。

日韓の先史時代、特に縄文時代頃に通じた研究者は少なからず存在するが、我が国の考古学だけでなく常時韓国にいてあちらの考古学情報にも精しい人は稀である。

本書は廣瀬さんが釜山大学に提出し文学博士号を授与された論文を基にしたもので、内容を簡略に示すと、〇韓日新石器時代交流史(あちらの大学に提出したので韓日になっている)、〇自然環境、〇土器から見える交流の世界、〇土器文化の融合と分離、〇石器・骨角器、〇装身具、〇交流と先史社会の構造の変化となっている。

素直な感想を言うと自分が縄文時代研究から遠ざかって以来、この分野の研究はあまり変化がないように感じていた。知らないだけだろうが。例外は小畑弘已さんの種子・昆虫の研究だが。しかし、本書を読むと確実に研究が進んでいることが分かる。興味深かったのは滑石粉末を土器材料に入れた相互の土器についての解説部分だった。また、彼我の土器編年同士を対比し、影響を与えたり受けたりしたと解説する際に細分した編年を用いる点も好感を抱く。

これまでの縄文時代と韓国新石器時代に関する研究の現状がよく理解でき、本書は縄文時代早期から中期頃のそれぞれの研究にとって必ずひも解くべきものとされるだろう。